ボウルの葉は、7割が残っている。
Share
文:オリバ(deeep 研究係)
吸い終わったボウルを、ひっくり返したことがある?
黒くなった葉が、ぽろっと出てくる。
見た目は、もう出がらし。
全部使い切った気がする。
でも、重さを量ると話が変わる。
10g詰めた葉は、だいたい7g残っている。
減ったのは、3gだけ。

家で吸っても、機械で吸っても、7割
2019年、サンディエゴ州立大学のKassemらが、ふだんシーシャを吸う50人の自宅を訪ねた。
研究費は米国食品医薬品局(FDA)と国立薬物乱用研究所。
ひとりに10gの葉を渡して、いつもどおり吸ってもらう。
終わったら、ボウルに残った葉を量る。
平均で7.01g。
詰めた量の70.1%が残っていた。
人によって差は大きい。
残った量は、少ない人で4.8g、多い人で9.5g。
吸っていた時間は平均33分。
機械でも、ほぼ同じだった。
2020年、FDAのEdwardsらは、10gの葉に炭を乗せ、57分かけて171口吸わせた。
使われた葉は平均31.35%。
市販の電気ヒーターだと20.56%。
人が吸っても、機械が吸っても、炭でも電気でも。
ボウルの葉は、半分も減らない。
熱を上げれば、減りは増える
じゃあ、熱が足りないだけなのか。
Edwardsたちは、そこも試している。
温度を細かく決められる研究用の電気ヒーターを作り、設定温度を変えて同じように吸わせた。
- 350℃:26.14%
- 370℃:31.57%
- 400℃:40.18%
- 470℃:55.74%
(350℃と470℃は3回の平均、370℃と400℃は1回ずつの測定。)
温度を上げるほど、葉はよく減る。
470℃で、ようやく半分を超えた。
同じ実験で、炭のときに葉の中(上から10〜20mmの位置)で測った温度は、平均約119℃。
炭の真下では平均約430℃あったのに、葉の中はお湯より少し熱い程度。
熱は、上から入ってくる。
そして、下に行くほど弱くなる。
(炭のそばは約450℃、ボウルの出口は約50℃という話は、前に「シーシャは、吸わないと75℃。」で書いた。)
おもしろいのは、研究用ヒーターが炭と同じくらい葉を減らせた理由。
著者たちは、ヒーターの側面を断熱テープで巻いて、熱を逃がさなかったからだと考えている。
炭は、下以外の全方向で空気と熱をやりとりしてしまう。
炭の熱のかなりの部分は、葉ではなく、まわりの空気に配られているのかもしれない。
ちなみに、熱を下から広い面でかけ続ける電気ヘッドでは、葉の約7割がなくなった例もある。
ただ、その煙は荒くなりやすい。これは「炭をやめたら、煙が荒くなった。」の話。
残った7割には、何が入っている?
シーシャの葉は、葉っぱだけでできていない。
前に「シーシャの煙は、煙じゃない。」で書いたとおり、重さの大部分はグリセリンや糖や香料だ。
では、そのグリセリンは、どれくらい煙になって出ていくのか。
2022年、JTIのHoltらが、葉に入っている添加物52種について、1時間ぶん(175口)の煙に何%出てきたかを測っている。
(この研究はシーシャ用たばこを作るJTIの資金によるもので、著者もJTIの社員。)
グリセリンは、17%。
同じ保湿剤のプロピレングリコールは58%。
煙の白さの主役のはずのグリセリンが、1時間吸っても2割も出てこない。
煙にならなかった分は、多くがボウルの中に残っていると考えるのが自然だ。
(水に捕まった分や、熱で別の物に変わった分もあるはずで、この研究は葉の残りまでは測っていない。)
ここからは、私の推理。
吸い終わった葉は、からからに乾いた燃えかすではない。
上のほうは熱で乾き、下のほうは、甘い液をまだ抱えたまま。
ボウルの葉は、上から順番に、薄く使われているのだと思う。
「7割残る」は、もったいない話ではない。
熱が届いたところまでが、その日のシーシャ。
それだけのこと。
家で試せる、3つのこと
1. 吸う前と後に、ボウルごと量ってみる。
キッチンスケールで十分。
研究の平均は、10gで約3g減。
自分の1回が何g使っているかを知ると、炭の強さを感覚ではなく数字で振り返れる。
2. 吸い終わった葉を、上と下に分けて見る。
スプーンで上半分と下半分に分けて、色と湿り気を比べてみてほしい。
熱がどこまで届いていたか、ボウルが教えてくれる。
3. 葉を増やす前に、上面を見る。
熱は上から入るので、深く詰めても、下の層まで届くとは限らない。
物足りないときは、葉の量より、炭の位置や上面の広さを先に見直す。(オリバの試案)

ボウルの葉は、出がらしじゃない。
まだ、7割がそこで待っている。
参考
- Kassem, N. O. F. et al. (2019) *Waterpipe device cleaning practices and disposal of waste associated with waterpipe tobacco smoking in homes in the USA*, Tobacco Control 29(Suppl 2) — doi:10.1136/tobaccocontrol-2019-054959 / PMC6980180(米FDAたばこ製品センター・国立薬物乱用研究所の助成)
- Edwards, R. L. et al. (2020) *Testing of a commercial waterpipe electric heater and a research-grade waterpipe electric heater*, Tobacco Prevention & Cessation 6:49 — doi:10.18332/tpc/125355 / PMC7493644(米FDAの委託研究)
- Holt, J. M. et al. (2022) *Investigating the transfer rate of waterpipe additives to smoke as an integral part of toxicological risk assessments*, Toxicology Reports 9 — doi:10.1016/j.toxrep.2022.04.022 / PMC9301603(JT International SA 資金/著者はJTI社員)