シーシャは、吸わないと75℃。

シーシャは、吸わないと75℃。

文:オリバ(deeep 研究係)


炭を乗せて、誰も吸わずに置いておく。
ボウルの葉は、どこまで熱くなると思う?

答えは、約75℃。

お風呂より熱くて、フライパンにはほど遠い。
真っ赤な炭が乗っているのに、放っておくと葉はそのあたりで落ち着いてしまう。

炭を乗せたまま誰も吸っていないボウルの横顔

2003年、ベイルート・アメリカン大学のShihadehが、ボウルに温度センサーを差し込んで測った数字だ。
吸わずに燃やしただけのボウルで、葉の温度は75℃で頭打ちになった。

じゃあ、あの白い煙を生む熱は、どこから来るのか。
犯人は炭じゃない。
あなたの肺だ。

熱には、2本の道がある

炭からボウルへの熱の運ばれ方は、大きく2つ。

ひとつは伝導。
炭からホイル、ホイルから葉へ。触れているところから、じわじわ伝わる。
吸っていない間は、ほぼこれだけ。

もうひとつは対流。
吸った瞬間、炭の横を通った空気が熱風になって、葉のすき間に流れ込む。
熱が「運ばれる」のは、吸っている数秒間だけだ。

同じ研究グループのMonzerら(2008年)は、計算上、炭からの輻射はほぼ無視できる、としている。
つまりボウルの熱は、「触れて伝わる」か「吸って運ばれる」か。ほぼその2択。

吸っていない間は触れて伝わる伝導だけ、吸った数秒間だけ熱風が葉の奥へ運ばれる。
吸っていない間は触れて伝わる伝導だけ、吸った数秒間だけ熱風が葉の奥へ運ばれる。

炭のそばは450℃、出口は50℃

Shihadehの測定では、吸いながらのセッションで、炭のすぐ近くは約450℃。
ボウルの出口では約50℃。
手のひらに収まるボウルの、入口と出口で400℃の落差がある。

しかも450℃は、葉が燃え続けるには足りない温度だという。
だからボウルで起きているのは、燃焼ではなく揮発。
葉に染み込んだグリセリンや香りを、温めて飛ばしているだけだ。

炭のそばは約450℃、ボウルの出口は約50℃。吸わずに置いた葉は約75℃で頭打ちになる。
炭のそばは約450℃、ボウルの出口は約50℃。吸わずに置いた葉は約75℃で頭打ちになる。

吸うたびに熱風が奥へ届き、セッションが進むほど、葉の平均温度はじわじわ上がっていく。
吸わなければ75℃。吸えば、奥まで熱が届く。
アクセルは、吸う人の側にある。

一口で、50℃下がる場所もある

ここで少しややこしい数字をひとつ。

2019年、UCアーバインのPerraudらは、ボウル内の温度を265〜318℃と測った。
そして、一口ごとに約50℃下がり、吸い終わるとまた戻る、と報告している。

上がるの?下がるの?

両方、たぶん正しい。
測った場所も、炭の数も、研究ごとに違う。
Shihadehの記録では、吸うたびに温度が跳ね上がる地点があった。Perraudの測定点では、吸うたびに下がった。

オリバの読みはこうだ。
吸った空気は、熱いところからは熱を奪い、冷たい奥には熱を置いていく。
一口は、ボウルの中の熱をかき混ぜる動きなのだと思う。
(ここは研究の結論ではなく、2つの測定を並べたときの解釈として読んでほしい)

煮えたボウルは、煙が減る

Monzerらの実験には、面白い失敗談がある。

炭の代わりに電熱ヒーターを作ったとき、熱を強くしても奥の温度が上がらない。
さらに出力を上げると、葉の消費は増えたのに、吸って出てくる煙は逆に減った。

見ると、吸っていない間に、ボウルの上から煙が漏れていた。
伝導が強すぎて、葉を吸う前に「煮て」しまい、香りの成分がホースではなく空へ逃げていたのだ。
通常のシーシャでは、パフの合間にボウルから煙は立たない、と論文は書いている。

解決策は、ヒーターとボウルの接触を減らし、空気が通る道を作ること。
伝導を弱め、対流で運ぶ。
つまり、ちゃんと「吸われる」設計に戻したわけだ。

伝導が強すぎると、吸う前に葉が煮えて、香りはホースではなく空へ逃げる。
伝導が強すぎると、吸う前に葉が煮えて、香りはホースではなく空へ逃げる。

ボウルの読み方、3つ

ボウルを読む目安は3つ:置いて煙が立てば熱すぎ、足す前に2〜3口、熱は量より通り道。
ボウルを読む目安は3つ:置いて煙が立てば熱すぎ、足す前に2〜3口、熱は量より通り道。

1. 置いている間に煙が立ったら、熱すぎ。
吸っていないのにボウルから白いものが上がるなら、上層が煮えている。
香りが、あなたではなく部屋に配られている状態だ。
炭を縁にずらすか、1個外す。

2. 炭を足す前に、2〜3口ゆっくり吸う。
しばらく放置したボウルは、伝導だけで保たれた低い温度にいる。
薄く感じるのは炭が弱いからとは限らない。熱が奥まで運ばれていないだけかもしれない。
まず吸って、熱を運んでから判断する。

3. 熱は「量」より「通り道」。
炭とボウルがべったり触れているほど、伝導が勝つ。
炭の下に空気が抜ける余地を残すと、熱は吸ったときに運ばれる側へ寄る。
強い炭を乗せるより、吸ったときに熱が動けるボウルを作る。

炭を縁に寄せ、炭の下に空気の抜けるすき間を残したボウルを真上から

炭はエンジン。
でも、アクセルを踏んでいるのは、いつもあなたの一口だ。

参考

  • Shihadeh A. (2003) Investigation of mainstream smoke aerosol of the argileh water pipe, Food and Chemical Toxicology 41: 143–152 — doi:10.1016/S0278-6915(02)00220-X
  • Monzer B. et al. (2008) Charcoal emissions as a source of CO and carcinogenic PAH in mainstream narghile waterpipe smoke, Food and Chemical Toxicology 46: 2991–2995 — doi:10.1016/j.fct.2008.05.031 / PDF
  • Perraud V. et al. (2019) Chemical characterization of nanoparticles and volatiles present in mainstream hookah smoke, Aerosol Science and Technology — doi:10.1080/02786826.2019.1628342 / PMC7546025
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