シーシャ屋は、国ごとに別の店になる。

シーシャ屋は、国ごとに別の店になる。

文:オリバ(deeep 研究係)


ボトルがあって、ボウルがあって、炭がある。
道具は、世界中だいたい同じだ。

でも、それを置いた店が「何の店か」は、国境を越えると変わる。

ある国では、それはサービス。
ある国では、火の元。
ある国では、売り物。
ある国では、夜の店。

2026年の秋、たまたま同じ時期に、あちこちの国でシーシャ屋のルールが動いた。
並べてみたら、法律がシーシャのどこを見ているかが、国ごとにきれいに違っていた。

図:同じシーシャでも、法律が見ているものは国ごとに違う
図:同じシーシャでも、法律が見ているものは国ごとに違う
世界地図を広げたローテーブルの上に、シーシャが一台

インド:たった一語で、店が消えた

2026年9月29日、インドのアラハバード高裁が判断を出した。
ウッタル・プラデーシュ州のレストランは、指定喫煙区域の中でもフッカー(シーシャ)を出せない。

カギは、規則の中の一語だった。

2008年の規則では、喫煙区域について「喫煙のためだけに使い、ほかのサービスはしてはならない」と書かれていた。
店側はここを読み込んだ。シーシャは喫煙そのものだから、「ほかの」サービスには当たらない、と。

2017年、国はこの「ほかの(other)」を消した。
新しい文は「喫煙区域では、いかなるサービスもしてはならない」。

裁判所は、シーシャを「サービス」だと見た。
葉を詰め、水を張り、ホイルを張り、炭を置く。そこには技術がいる。道具を貸しているだけ、という店側の理屈は通らなかった。
そして、非喫煙者がきれいな空気を吸う権利は、商売の自由より優先される、とも述べている。

インドのシーシャ屋を止めたのは、煙の量ではなく「誰かが用意してくれる」という一点だった。

図:2017年、規則から「ほかの」の一語が消え、シーシャを出す余地がなくなった
図:2017年、規則から「ほかの」の一語が消え、シーシャを出す余地がなくなった

パキスタン:炭の置き場所が問題になる

首都イスラマバードでは9月9日、行政が屋内・屋外を問わず、許可証を持つ店も含めてシーシャカフェを「追って指示があるまで」禁止した。
きっかけは、イスラマバード高裁が「規則がないまま営業している」と指摘したこと。

面白いのは、行政が挙げた理由のひとつだ。
炭と道具の保管が雑で、大きな火災の危険がある。

客席の煙ではなく、店の裏の炭置き場。
シーシャ屋を「火を扱う店」として見ると、論点はそこになる。

ただ、話はまだ揺れている。高裁はその後、法律を守って営業する店への不当な取り締まりはしないように、とも命じた。規則づくりの期限は10月中旬とされ、この記事を書いている時点で新しい規則は出ていない。

ロシア:煙を禁じたら、ミックスの文化が育った

ロシアでは2014年6月から、飲食を出す店の屋内でたばこを吸うことが法律で禁じられた。
そこで多くのラウンジは、タバコを使わないミックスで営業する道を選んだとされる。茶葉やハーブで、香りを組み立てる文化だ。

そして2026年10月1日、モスクワ州でたばこの販売にライセンスが必要になった。対象にはシーシャ用の葉も入る。学校や浜辺の近くでは販売できない。

ロシアは、シーシャを「売り物」として管理しはじめた。
困っているのはラウンジ側だ。業界団体は1月、首相あてに「ラウンジ向けの許可の枠がない」と訴えている。団体によれば、国内には1万を超えるラウンジがあるという。

アメリカ:煙より、閉店時間

オハイオ州の小さな市、シャロンヴィル。
2026年2月末、ここで初めてのシーシャラウンジ条例が緊急で可決された。

中身を見ると、たばこの法律というより夜の街の法律だ。

  • 営業は許可制
  • 21歳未満は入店禁止
  • 店内で酒は出せず、持ち込みもできない
  • 警察が見られる防犯カメラを置く
  • 閉店は午前2時30分。閉店後2時間以内に駐車場を掃除する

きっかけは、隣のシンシナティが取り締まりを強めて、客が流れてきたこと。夜中のけんかや騒ぎが増えたのだという。

一方、カリフォルニア州レッドウッドシティは6月、フレーバー付きの葉の例外を4対2でやめた。こちらは「味」を見ている。
アメリカは、夜と味の2つの方向から店を囲んでいる。

図:シャロンヴィルの条例は、閉店2:30と駐車場清掃までを決めている
図:シャロンヴィルの条例は、閉店2:30と駐車場清掃までを決めている

そして、日本

日本のシーシャ屋の多くは「喫煙目的施設」という枠に入っている。
煙のための場所なので、主食を主として出せない。
この話は「シーシャ屋で、パスタが出ない理由。」に書いた。

インドなら「サービス」、日本なら「煙のための場所」。
同じ一服を、片方は店の仕事と見て、片方は店の目的と見ている。

間接照明の静かなシーシャラウンジ、低いテーブルにボトルが並ぶ

知っておくと、ちょっと楽しい3つのこと

1. 旅先では、看板より先にルールを調べる。
ある国で当たり前の店が、隣の国では営業できないことがある。インドのように、州や時期で変わる国もある。

2. ロシアのラウンジは、法律が生んだ実験室として見る。
タバコに頼れない条件が、香りの組み立てを磨いた。規制が文化を育てることもある。

3. 日本のメニューを、もう一度眺めてみる。
ナッツとアイスと飲み物だけのメニューも、世界の中に置くと「日本の答え」のひとつに見えてくる。


シーシャは、どこでも同じ形をしている。
違うのは、それを見る法律の目だ。

参考

  • Bar & Bench「Allahabad High Court bars hookah in UP restaurants」2026年9月 — barandbench.com
  • LiveLaw「Hookah bars can't operate in UP designated smoking areas: Allahabad High Court」— livelaw.in
  • インド保健家族福祉省 G.S.R. 500(E)(2017年5月23日、喫煙区域の規則改正)— tobaccocontrollaws.org
  • The Express Tribune「Islamabad imposes complete ban on shisha cafes following IHC order」2026年9月9日 — tribune.com.pk
  • The Express Tribune「Shisha cafés face regulatory clampdown」2026年9月10日 — tribune.com.pk
  • Daily Pakistan「Relief for Islamabad sheesha cafes as IHC bars unlawful action」2026年9月12日 — dailypakistan.com.pk
  • ロシア連邦法 第15-FZ号(2013年2月23日。第12条:飲食店の屋内での喫煙禁止、2014年6月施行)— consultant.ru
  • RuNews24「Подмосковье вводит лицензии на табак, кальяны, стики и вейпы」2026年9月29日 — runews24.ru
  • Retail.ru「Кальянные и сигарные лаунжи обратились к правительству РФ」2026年1月14日 — retail.ru
  • WCPO「Sharonville passes first hookah lounge regulations」2026年 — wcpo.com
  • Redwood City Pulse「Redwood City ends flavored shisha exemption for hookah businesses」2026年6月9日 — rwcpulse.com
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