ブロンドは空気を焼き、ダークは葉を焼く。
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文:オリバ(deeep 研究係)
詰め方の正解は、ボウルの前にはない。
何百キロも離れた、乾燥小屋の中にある。
「ブロンドはふんわり、ダークはぎゅっと」。
シーシャをやっていれば、一度は聞く教えだ。
でも、なぜそうなのかを説明できる人は少ない。
答えは葉の生い立ちにある。
畑で刈られたあと、葉がどんな風に乾かされたか。
そこで、中に残る糖の量が100倍以上変わってしまう。

同じ葉でも、乾かし方で別の食材になる
たばこの乾燥法は、大きく4つ。
- 熱風乾燥(フルーキュア):小屋を煙道で温めて、数日で乾かす。いわゆるバージニア
- 自然乾燥(エアキュア):風通しのいい小屋に吊るし、数週間かけて乾かす。代表はバーレー
- 火力乾燥(ファイアキュア):直火の煙でいぶす。香木でいぶしたラタキアもこの仲間
- 天日乾燥(サンキュア):太陽の下で干す。トルコ系のオリエント葉
米国FDAの資料にまとめられている糖分の値が、かなり衝撃的だ。
- 熱風乾燥のバージニア:8〜30%
- 天日乾燥のオリエント:10〜20%
- 自然乾燥のバーレー:0.2%未満

同じ「たばこの葉」なのに、片方は干し柿、片方は干し草。
糖を残すのは、スピードだ
乾燥が始まると、葉の中のデンプンは酵素によって糖に分解されていく。
ここまではどの葉も同じ。
差がつくのはその先だ。
自然乾燥はゆっくり進む。そのあいだも葉はまだ生きていて、できた糖を酵素が食べ尽くしてしまう。
一方の熱風乾燥は、高温で一気に酵素を止める。デンプンが糖に変わったところで、時間を凍らせる。
つまり甘さの正体は、品種より乾かす速さ。
遅いと酵素にかじられ、速いと糖が残る。

ちなみに、この熱風乾燥の始まりには有名な話がある。
1839年、ノースカロライナの農場で、見張り番をしていた奴隷の青年スティーブンが居眠りし、慌てて木炭をくべたら、見たことのない鮮やかな黄色の葉ができた——というものだ。
州の史跡マーカーにもなっている。ただしこの話が記事になったのは1886年、出来事から50年近く後のこと。そのため、史実かどうかを疑う歴史家もいる。
「偶然の一夜」は、たぶん物語として少し磨かれている。
ブロンドとダークは、何が違うのか
シーシャの「ブロンドリーフ」は、主にバージニア系の葉を洗って使うとされる。
洗うことでニコチンや渋みが抜け、そこに糖蜜やグリセリン、香料をたっぷり吸わせる。スポンジに近い。
「ダークリーフ」は、洗わない、あるいは発酵させた葉を使うとされる。
自然乾燥や火力乾燥の葉が多いと言われ、葉そのものの味とニコチンが残る。
※このブロンド=洗う/ダーク=洗わない、という整理は業界で広く語られているものの、公式な定義があるわけではない。メーカーごとに製法は違う。

もうひとつ面白いデータがある。
FDAの資料によると、糖が少なく窒素が多いバーレーの煙は、バージニアよりずっとアルカリ性に寄る。そしてアルカリ性の煙は、喉に「ガツン」と来る感覚を強める。
これは紙巻きたばこの話だが、ダークリーフの「重さ」を考えるヒントになる。
だから、詰め方は逆になる
ボウルの中で熱が動く道は2つ。
空気が運ぶ(対流)と、葉が手渡す(伝導)。
ブロンドは、空気を焼く。
シロップを吸った葉は、それ自体が糖と保湿剤のかたまり。
ぎゅっと詰めると、炭のすぐ下だけが熱くなって焦げ、下の層は冷えたまま。
ふんわり詰めて隙間をつくれば、吸うたびに熱い空気が全体を通り抜け、ボウル全体が均一に温まる。
ダークは、葉を焼く。
乾いた、洗っていない葉は、隙間だらけだと熱が届く前に空気が冷めてしまう。
密に詰めて葉と葉を接触させると、熱がバケツリレーのように下へ伝わる。

ロシアのシーシャ職人たちは、この「詰め方」をかなり細かく言い分けている。
- ルイフラヤ(ふんわり):押さえずに、ほぐした葉を落とすだけ
- ヴ・オトストゥプ(隙間あり):上面とホイル・HMDのあいだに数mmの空間を残す
- ヴ・カサーニエ(接触):葉の上面が、ホイル・HMDにちょうど触れる高さ
- オーバーパック:縁より高く盛り、上面を炭の熱で焼き固めて「盾」にする
上に行くほど、葉が受け取る熱は大きく、味もニコチン感も強くなるとされる。
ざっくり言えば、ブロンドは上の2つ、ダークは下の2つが出発点になる。

家で試せる3つのこと
1. パッケージの裏で、乾燥小屋を想像する。
ブロンドか、ダークか。まずそこで詰め方の半分が決まる。
2. ブロンドで焦げたら、炭より先に「密度」を疑う。
押し込みすぎていないか。ほぐし直して、上面に数mmの余白を。
3. ダークで煙が痩せたら、上面を1段上げる。
隙間から接触へ。葉の高さを変えるだけで、熱の届き方がまるで変わる。
詰めているのは葉じゃない。
その葉が、乾燥小屋で過ごした時間だ。
参考
- U.S. FDA, CTP. Review of Saccharides as Tobacco Ingredients: Effects on Smoke Chemistry — fda.gov
- North Carolina Department of Natural and Cultural Resources, "Bright Leaf Tobacco (G-5)" — dncr.nc.gov
- NCpedia / ANCHOR, "Bright Leaf Tobacco" — ncanchor.org
- Hookah House「Способы забивки табака в чашу кальяна」— hookahhouse.ru
- Grizzly Hookah「Оверпак — что это и как забивать?」— grizzlyhookah.com
- Zahrah USA, "Blonde leaf vs Dark leaf shisha" — zahrahusa.com