大きいシーシャほど、深く吸ってしまう。
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文:オリバ(deeep 研究係)
背の高いシーシャの前に座ると、なぜか背筋が伸びる。
そして、一口が長くなる。
これ、気分の話だと思っていた。
ところが、ちゃんと測った人たちがいた。
同じ葉、同じボウル、同じホース。
変えたのは、本体の大きさだけ。
それだけで、一口の量が約1.4倍になった。

30cm、57cm、98cm
2024年、テキサス大学アーリントン校などのチーム(Dabroyら、Ben Talebが責任著者)が、ふだんシーシャを吸う38人に協力してもらった。
用意したのは、高さ30cm・57cm・98cmの3台。
ボトルの容量は600mL、680mL、1,750mL。
葉はダブルアップル15g。
ボウルもゴムパッキンもホースも、全部同じものにそろえた。
ステムが水に沈む深さも、3台とも2.5cm。
1人がそれぞれの台で45分ずつ、好きなように吸う。
ホースに付けたセンサーが、一口ごとの量と長さを記録した。
結果。
- 一口の量:小 0.57L → 中 0.63L → 大 0.78L
- 一口の長さ:2.18秒 → 2.20秒 → 2.48秒
- 45分で吸い込んだ合計:約78L → 約80L → 約118L
小と中はほとんど同じ。
大きい台になったとたん、ぐっと増える。
おもしろいのは、吸った回数には、はっきりした差がなかったこと。
回数ではなく、一口が深くなっていた。
そして大きい台は、小さい台よりも「満足できる」「おいしい」と評価された。
重いから、ではない
ここで、私はひっかかった。
大きい台は、引きが重いから強く吸うのでは。
そう考えるのが自然だ。
でも、2003年にShihadehが書いている。
吸うときに感じる抵抗の主役は、ステムの先より上にある水の高さだと。
吸ってボトルの中を少し減圧し、その水の重さに勝った瞬間、泡が出る。
この実験では、その水の高さが3台とも2.5cm。
つまり、いちばん大きな抵抗は、そろっていたことになる。
(ちなみにこの研究では、引きの重さそのものは測っていない。ここは正直に書いておく。)
重さが同じなら、変わったのは何か。
手がかりは、人ではなく機械で吸わせた研究にある。
大きい台の煙は、薄くて粒が大きい
2020年、米デイヴィッドソン大学のHauserらは、機械で同じように吸わせながら、本体の大きさだけを変えた。
高さは22cmから55cm、ボトルは300mLから1,250mLへ。
すると、煙の中身が変わった。
- 1立方メートルあたりの粒子の重さ:約10,000mg → 約2,800mg
- 粒子の数:およそ10分の1に
- 粒子の大きさ:約125nm → 約170nm
同じ吸い方でも、大きい台の煙は薄く、粒が大きい。
長い通り道を進むあいだに、小さな粒どうしがぶつかってくっつく。そう考えられている。
ここからは、私の推理。
一口ぶんの空気に含まれる煙が薄いなら、人はいつもの「濃さ」を求めて、無意識に多く吸い込むのかもしれない。
Dabroyたちも、大きなボトルの中の空気を入れ替えるには深い吸い込みが要る、と考察している。
人は、吸う量を決めているつもりで、じつは道具に合わせて吸い方を調整している。
大きい台は、肺の使い方まで連れていく。
家で試せる、3つのこと
1. 台を替えた日は、一口を数えてみる。
心の中で「いち、に」と数えるだけでいい。
この研究の平均は、小さい台で約2.2秒、大きい台で約2.5秒。
自分の一口が、いつもと違う長さになっていないか、気づけるようになる。
2. 比べるなら、水の高さをそろえる。
台の違いを味わいたいなら、ステムが沈む深さを同じにする。
水位がずれると、比べているのが台なのか水なのか、分からなくなる。
3. 同じミックスでも、台ごとに味見し直す。
大きい台の煙は、粒が大きく、空気が多い。
同じ葉でも、香りの立ち方は変わるはずだ。
「この台ではこの配合」と、メモを台ごとに分けておくと楽しい。

私たちは、シーシャを吸っているつもりでいる。
でも、ほんの少しだけ、シーシャに吸わされている。
大きな台の前で背筋が伸びるのは、たぶん気のせいじゃない。
参考
- Dabroy, D. et al. (2024/2025) *Waterpipe Size Matters: The Effect of Waterpipe Size on Toxicant Exposures and Subjective Experiences*, Nicotine & Tobacco Research 27(7) — doi:10.1093/ntr/ntae229 / PMC13032086(米国立薬物乱用研究所の助成)
- Hauser, C. D. et al. (2020) *Waterpipe tobacco smoke toxicity: the impact of waterpipe size*, Tobacco Control 29(Suppl 2):s90–s94 — doi:10.1136/tobaccocontrol-2019-054960
- Shihadeh, A. (2003) *Investigation of mainstream smoke aerosol of the argileh water pipe*, Food and Chemical Toxicology 41:143–152 — doi:10.1016/S0278-6915(02)00220-X