シーシャ屋で、パスタが出ない理由。
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文:オリバ(deeep 研究係)
シーシャ屋のメニューを、よく見てほしい。
ナッツ。チョコ。アイス。ポテトチップス。
ドリンクは、やたら充実している。
でも、パスタがない。
カレーもない。おにぎりもない。
店主が麺類を嫌っているわけではない。
あれは、法律の形をしたメニューだ。

「喫煙目的施設」という、小さな枠
2020年4月、改正健康増進法が全面施行された。
2人以上が使う施設の屋内は、原則禁煙。飲食店も例外ではない。
ただし、例外の枠がいくつかある。
そのひとつが喫煙目的施設。
公衆喫煙所、店内で吸えるたばこ販売店、そして「喫煙を主たる目的とするバー、スナック等」。
多くのシーシャ屋は、この3つ目に入る。
厚生労働省のガイドラインによると、条件はざっくり3つ。
- たばこを対面で販売していること(出張販売を含む)
- 喫煙する場所の提供が、主たる目的であること
- 「通常主食と認められる食事」を主として提供しないこと
主食とは何か。
自治体のFAQでは、米飯類、パン類(菓子パンを除く)、麺類などが主に該当するとされる。地域や文化で変わりうる、という但し書き付き。
つまりパスタは、麺類だ。
カレーライスは、米飯類だ。
食事がメインの店は、そもそもこの枠に入れない。東京都も「飲食や遊技を目的とした施設は該当しない」とわざわざ注意を出している。
だからメニューは、つまむもの、甘いもの、飲むものに寄っていく。
菓子パンが除外されているのは、ちょっと面白い。メロンパンは、法的には主食ではないらしい。

店員が、みんな20歳以上の理由
喫煙目的室には、20歳未満は立ち入れない。
客だけの話ではない。
厚労省のガイドラインは、20歳未満の労働者を喫煙可能な場所に立ち入らせて業務をさせないよう求めている。清掃作業も含めて。
19歳のアルバイトは、閉店後の床掃除すらできない。
入口の年齢確認が丁寧なのも、店の入口に標識が貼ってあるのも、広告に「喫煙目的室設置施設」と書いてあるのも、同じ根っこから来ている。

1グラムは、1本
次は値段の話。
日本の税法では、シーシャの葉はパイプたばこに分類される。
そしてパイプたばこは、1gを紙巻きたばこ1本として数える(財務省)。
たばこ税は国と地方を合わせて、1,000本あたり15,244円。
1本あたり約15.2円。
つまりシーシャの葉は、1gあたり約15円が税になる計算だ。
仮にボウルに12g詰めたとすると、税だけで約180円。
あの小さなボウルの中に、紙巻き12本分の税が座っている。

ちなみに2026年の春と秋に話題になった増税は、加熱式たばこの課税方式の見直しで、シーシャとは別の話。
ただし国のたばこ税は、2027年4月から3段階で1本0.5円ずつ引き上げられる予定になっている。本数で数える以上、シーシャの葉も無関係ではいられない。
それでも、増えている
制約だらけの業態だ。
主食は出せない。20歳未満は雇えない。葉には紙巻き並みの税がかかる。
それでも日経MJは2024年10月、シーシャ店が全国で1,600店を超え、都内ではスターバックスより多いと報じた。
パスタがなくても、人は来る。
むしろ、食事で急かされない場所だからこそ、長居できるのかもしれない。

知っておくと、ちょっと楽しい3つのこと
1. メニューは「法律の地図」として読む。
ナッツ、アイス、ケーキが多いのは、店のセンスだけではなく枠の形でもある。その中で何を出すかに、店の個性が出る。
2. 年齢確認には、素直に応じる。
店は法律上、20歳未満を入れられない。身分証を持っていくのが、いちばん話が早い。
3. 葉の値段を、1g単位で見てみる。
家で吸う人は、缶の容量で割ってみるといい。1gあたり約15円は税。残りが、葉と香りと手間の値段だ。
パスタが出ないのは、店が不親切だからではない。
あの店は、法律の上では「煙のための場所」なのだ。
参考
- 厚生労働省「職場における受動喫煙防止のためのガイドライン」— PDF
- 東京都「『喫煙目的施設』は、飲食や遊技等を目的とした施設は該当しません」— PDF
- 練馬区 よくある質問「主食の定義は?(受動喫煙)」— FAQ
- 財務省「たばこ税等に関する資料」— mof.go.jp
- 国立市「市たばこ税」(税率表)— city.kunitachi.tokyo.jp
- 日本経済新聞(日経MJ)「2軒目、シーシャでいいよね 都内は店舗数スタバ超え」2024年10月14日 — nikkei.com