煙の4割は、水。
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文:オリバ(deeep 研究係)
シーシャの煙を集めて、重さを量る。
そのうち約42%が、水だった。
ベイルート・アメリカン大学のShihadehとSalehが、2005年に測った数字だ。
正確には、フィルターに捕まった粒子の重さ1gあたり0.416gが水。
あなたが「濃い」と感じたあの一口の、半分近くは水でできている。


では、ボトルに入っているあの水は、何をしているのか。
「濾過している」とよく言われる。
でも、データを並べると、話はそんなに単純じゃない。
冷やしているのは、水とステム
2003年、Shihadehはシーシャのあちこちに温度センサーを差し込んだ。
炭のすぐ下は、約450℃。
ヘッドの出口では、もう約50℃。
そしてホースの入口に着くころには、ほぼ室温。ホースの中では、熱のやり取りがほとんど起きていなかった。
つまり、冷やす仕事はステムと水の区間で終わっている。
長いホースは、冷却装置ではない。ただの通り道だ。

同じ研究で、ボトルの水を抜いて吸わせる実験もしている。
ニコチンは1セッション 2.11mg → 9.29mg。約4.4倍に増えた。
一方、タール(ニコチンと水を除いた粒子)は 0.39g → 0.45g。著者は「はっきりした差はない」と書いている。
水は、水に溶けやすいものを選んで捕まえる。溶けにくいものは、ほぼ素通りする。

ただし著者自身、水を抜くと泡の振動で炭の燃え方まで変わるので、結論は「暫定的」と断っている。正直な論文だ。
香りは、水で減るのか
ここからが面白い。研究者の意見が割れている。
減る派。 イェール大のErythropelら(2021年)は、1台のシーシャに切り替えバルブをつけ、水を通る前と後の煙を比べた。
結果は、バニリン 1/3.8、ベンズアルデヒド(チェリーやアーモンドの香り)1/10、オイゲノール(クローブ系の香り)1/4.1。
3種類のフレーバーで試した数字で、試行回数は多くない。
通る派。 UCアーバインのPerraudら(2019年)は、水あり・水なしで煙をリアルタイムに測った。
気体の成分の分布も量も、ほとんど変わらなかった。
例外はメタノールとエタノール。この2つだけは水にしっかり捕まった。
どちらが正しいのか。
たぶん、どちらも自分のシーシャでは正しい。
面白いのは、減る派のErythropelたちも「水への溶けやすさは、たぶん小さな要因にすぎない」と書いていること。
効いてくるのは、泡の大きさ、ステムが水に沈む深さ、煙の通り道の長さ。
つまり、水の効き方は、本体の設計と水位で変わる。
香りの一部は水に置いていかれるかもしれない。どれだけ置いていくかは、あなたのボトル次第だ。

氷と、ミルクと、ジュースの話
氷。 オハイオの研究チーム(Brinkmanら、2020年)が、ボトルに水293mLと氷15個を入れて比べた。
メンソールの量は、氷ありでも氷なしでも統計的に差なし。
ミント系の「スーッ」を強くしたくて氷を入れても、分子の量は増えない。変わるとすれば、手に伝わる冷たさと、見た目だ。
ミルク、ジュース、お酒。 「水の代わりに入れると煙が増える」「まろやかになる」という話は昔からある。
でも、査読された研究データは、探しても見つからなかった。
確かなのは、台所レベルの話だけ。
ミルクやジュースは泡立って、ステムの上まで上がってきやすい。糖やたんぱく質はボトルの内側に残り、洗うのが大変になる。
効くかどうか分からないものに、掃除の手間だけは確実についてくる。
家で試せる、3つのこと
1. 引きが重いなら、まず水位。
吸うときに感じる抵抗のほとんどは、ステムの先より上にある水の重さだとShihadehは書いている。当時の典型は約3cm。
重いと思ったら、炭より先に水を減らす。
2. 水は毎回、入れ替える。
香りの一部が水に移るなら、昨日の水には昨日のフレーバーが溶けている。
新しい一服は、新しい水で。
3. 何か入れたいなら、目のために入れる。
19世紀のペルシャでは、ガラスのボトルにさくらんぼやバラの花びら、ジャスミンを入れていたと記録にある。泡の中で踊るのを眺めるためだ。
味は変えない。でも、時間は変わる。

水は、煙を洗う装置じゃない。
煙の温度と、引き心地と、香りの一部を決める、いちばん静かな部品だ。
そして、その水の中を通ってきた煙の、4割がまた水。
シーシャは、ずっと水の話をしている。
参考
- Shihadeh, A. (2003) Investigation of mainstream smoke aerosol of the argileh water pipe, Food and Chemical Toxicology 41:143–152 — doi:10.1016/S0278-6915(02)00220-X / 著者PDF
- Shihadeh, A. & Saleh, R. (2005) Polycyclic aromatic hydrocarbons, carbon monoxide, "tar", and nicotine in the mainstream smoke aerosol of the narghile water pipe, Food and Chemical Toxicology 43:655–661 — 著者PDF
- Erythropel, H. C. et al. (2021) Quantification of flavorants and nicotine in waterpipe tobacco and mainstream smoke and comparison to e-cigarette aerosol, Nicotine & Tobacco Research — PMC7885788
- Perraud, V. et al. (2019) Chemical characterization of nanoparticles and volatiles present in mainstream hookah smoke, Aerosol Science and Technology — PMC7546025
- Brinkman, M. C. et al. (2020) Effect of electric heating and ice added to the bowl on mainstream waterpipe semivolatile furan and other toxicant yields, Tobacco Control — PMC7050391
- Encyclopaedia Iranica, "TOBACCO"(ペルシャの水パイプの装飾)— iranicaonline.org